IT経営・デジタル経営の基礎

このページは、「IT導入」「IT経営」「DX」「デジタル経営」の4つを、
2つのグループ(IT導入・DX/IT経営・デジタル経営)と4つのステップ(IT導入 → IT経営 → DX → デジタル経営)の両面から整理する“全体の地図”となるパートです。

IT導入/IT経営/DX/デジタル経営の位置づけ

4つの用語の地図

比較表

IT導入・IT経営・DX・デジタル経営の違いを、主な観点ごとに整理すると次のようになります。
 

用語 主な対象 主な目的 イメージ
IT導入  部門・業務  作業時間の短縮・ミス削減・業務の見える化  既存業務にツールを入れて
効率を上げる
IT経営 会社全体とITの全体像
(ITポートフォリオ)
 経営目標とIT投資・運用を結びつけ、
中期的なIT計画を描く
 ITの中期計画・投資配分と
優先順位を決める
DX 事業モデル・業務・組織 売り方・働き方・価値提供の変革
(収益構造の見直しを含む) 
変革プロジェクト
(+DX認定取得 )
デジタル経営 経営スタイル・文化・意思決定   デジタルとデータを前提に、
日々の経営が自走する状態をつくる
「デジタルとデータが当たり前」の
経営状態 

 

IT経営・デジタル経営の基礎ガイド

ITと経営を結ぶ

IT経営デジタル経営を示す図

ITを「経営の言葉」で捉え直すための入門ガイド

IT導入やDXの情報は多い一方で、 
「結局、自社はどこから手をつけるべきか」
「ITの話と経営の話がどうつながるのか」
が見えにくいという声を多く伺います。

このページでは、IT導入・DX・IT経営・デジタル経営の関係を整理し、  
自社の「現在地」と「次の一歩」を考えるための基礎的な考え方を解説します。

IT導入/IT経営/DX/デジタル経営の全体像

IT活用の4段階

 
企業のIT活用は、大きく次の4つのレベルで捉えることができます。

IT導入

既存業務の効率化・自動化が中心。
紙・Excel・口頭連絡などをシステムに置き換え、
「ムリ・ムダ・ムラ」を減らす段階です。
 

IT経営

ITをヒト・モノ・カネと同じ「経営資源」として扱い、
業務・組織・意思決定をITで支える経営スタイルです。
経営目標とIT投資・運用を結びつけ、「ITで稼ぎやすい体制」をつくる段階です。
 

DX

デジタル技術をテコに、売り方・働き方・業務プロセスを見直す変革の取り組み。
IT経営で整えた土台をもとに、部署横断のプロジェクトとして
「事業の構造そのものを変える」ことに挑戦する段階です。

デジタル経営

デジタル技術とデータを前提に、日々の意思決定・業務運営・顧客との関係づくりが回っている経営スタイルです。
DXや継続的な改善の成果が定着し、「デジタルが当たり前」の状態になった段階です。

IT導入は「業務の効率化」、
IT経営は「経営の土台づくり」、
DXは「事業・業務の変革プロジェクト」、
デジタル経営は「事業全体の変革が定着した新しい当たり前の経営スタイル」と捉えると、
 
自社がいまどこにいるのか、次に何を目指すべきかが整理しやすくなります。

IT経営の基礎

経営に効くIT

 
IT経営は、ITを単なるコストや道具ではなく、「経営目標を達成するための仕組み」として位置づける考え方です。
 
代表的なポイントは次の通りです。

経営目標から逆算してITを考える

先にツールありきではなく、
「どの事業で、どの指標を、どれだけ改善したいのか」を起点にします。
 
 

業務プロセスとITをセットで設計する

システムだけ変えるのではなく、
業務フロー・役割分担・承認ルールなど
「仕事のやり方」も含めて見直します。
 
 

データに基づく意思決定を日常化する

売上・粗利だけでなく、案件・在庫・リード数など、
経営判断に必要な指標をITで見える化し、日常の会議や打合せで活用します。
 
 

IT投資の優先順位と効果を管理する

「何となく便利そうだから」ではなく、
投資額・期待効果・リスクを整理し、経営として納得できる順番で進めます。

ITリスク・セキュリティへの基本的な備え

万が一のトラブル時に「誰が・何を・どうするか」をあらかじめ決め、
バックアップや権限管理など、基本的な対策を整えます。

IT経営の狙いは、
「ITを入れたので少し便利になった」ではなく、
「ITのおかげで、会社としての戦い方・稼ぎ方が安定した」と言える状態をつくることです。

デジタル経営の基礎

事業変革の視点

 
デジタル経営は、IT経営で整えた土台の上に立ち、  デジタル技術とデータを活かして、事業全体を見直す段階です。

キーワードになるのは、次のような視点です。

顧客体験の再設計

紙・電話・対面だけでなく、オンライン・チャット・セルフサービスなど、
顧客が望む接点を複数用意し、「選ばれ続ける」状態を目指します。
 

新しい売り方・提供価値の追求

「一度売って終わり」から、サブスクリプションやサービス化、
データを活かした付加価値サービスなど、新しい収益の柱を検討します。
 

社内だけでなく社外も含めた連携

取引先・パートナー・地域とのデータ連携や共同プロジェクトなど、
1社だけでは実現しづらい価値を「共創」で生み出していきます。
 

組織文化・働き方のアップデート

テレワークやフレックスだけでなく、
データに基づく対話・プロジェクト型の働き方・権限委譲など、
デジタル時代に合った組織のあり方を模索します。

デジタル経営は、「DXプロジェクトを一つやること」ではなく、
経営そのものの軸足を「デジタルとデータを前提にした発想」に移していく長期的な取り組みです。

IT導入 → IT経営 → デジタル経営というステップ

段階的な進め方

多くの中小企業にとっては、
いきなりデジタル経営や大規模なDXに踏み込むのは現実的ではありません。
 
ここでは話をシンプルにするために、「IT導入 → IT経営 → デジタル経営」の3つの段階で説明しています。
このうち「DX(デジタルトランスフォーメーション)」は、IT経営で整えた土台の上で事業・業務・組織を変革するプロジェクト群として、IT経営とデジタル経営をつなぐ位置づけになります。

IT導入フェーズ

紙・Excel・属人化に依存した業務を見直し、
必要最低限の業務システムやクラウドサービスを整えます。

IT経営フェーズ

蓄積されたデータの可視化・分析・活用

導入したシステムを前提に、
指標設計・会議体・運用ルールを整え、
「ITを使って経営する」状態をつくります。

デジタル経営フェーズ

蓄積したデータと整った業務基盤を活かし、
新しいビジネスモデル・顧客体験・共創の可能性を具体的なプロジェクトとして検討します。

どの企業も必ず3まで行かなければならないわけではありません。
自社の規模・人員・マーケット次第で、「どこまでを目指すか」を決めることが大切です。

自社の現在地を確認するチェックポイント

現在地チェック

 

IT導入段階のサイン

 
紙・Excel・口頭連絡がまだ多く残っている
同じ情報を複数回入力している業務が多い
業務が担当者ごとのやり方に依存している
何かあったときに、どこを見ればよいか分からない

 
 

IT経営に近づいているサイン

 
月次だけでなく、日次・週次で主要な数字を確認している
会議でシステムの画面やレポートを見ながら議論している
IT投資の優先順位や目的が、経営層の言葉で説明できる
IT関連の役割や問い合わせ窓口が、社内で整理されている
 

 

デジタル経営に踏み出し始めているサイン

 

顧客データや利用状況データを分析して、サービス改善に活かしている
オンラインとオフラインを組み合わせた顧客接点を設計している
取引先・パートナーとデータや仕組みを連携する取り組みが始まっている
新しい売り方(サブスク・サービス化など)の検討が進んでいる
 

自社がどの段階の項目に多く当てはまるかを見るだけでも、
「今どこにいて」「次はどこを強化するべきか」の目安になります。

よくある勘違い・つまずきポイント

よくある落とし穴

 

ツール導入=DX/デジタル経営だと思ってしまう

 
新しいシステムを入れただけでは、IT導入の一部が進んだに過ぎません。
 
・業務のやり方が変わっていない
・会議や意思決定の中身が変わっていない
・指標や評価の基準が従来のまま
 
であれば、IT経営・デジタル経営には到達していません。
 

 

「ITは担当者の仕事」と、経営と切り離してしまう

 
・経営会議でITやデジタルのテーマがほとんど議題にならない
・IT投資の判断基準が「価格」や「便利そうかどうか」に偏っている
 
といった状態では、IT経営の土台づくりが進みにくくなります。
 

 

一気にゴールの姿を目指しすぎる

 
IT経営やデジタル経営は、経営・業務・組織にまたがる長期的な取り組みです。

・いきなり全社一斉に変えようとする
・大規模システムを一気に入れ替える
 
こうした進め方は、現場の負担が大きく、頓挫しやすくなります。
 
小さく始めて、  
 
・効果を確認しながら範囲を広げる
・失敗してもやり直せるサイズで試す
 
ことが、中小企業にとって現実的で安全な進め方です。
 

IT経営・デジタル経営の整理を進めたい方へ

次の一歩へ

自社のIT活用を「経営の言葉」で整理し直すだけでも、  
・これ以上IT導入を増やすべきか  
・まずは業務の標準化や指標づくりを優先すべきか  
・一部の領域でデジタル経営に踏み出す余地があるか  といった判断材料が見えてきます。

自社だけでは整理が難しい場合は、  第三者の立場から現在地を可視化し、  現実的なステップに分解する支援もご活用ください。

IT導入支援やIT経営・デジタル経営、社外CIOサービスと組み合わせながら、  
「導入 → 運用 → 定着 → 事業のアップデート」まで、  無理なく進めていく道筋を一緒に描いていきます。