IT導入とDXの違い

このページは、「IT導入 → IT経営 → DX → デジタル経営」という4つのステップのうち、主に「IT導入」と「DX」の違いと関係性を整理するパートです。

IT導入とDXの違い

違いを正しく理解し、自社の段階に合った一歩を選びましょう

 
IT導入は「今ある業務を、いかに効率よく回すか」を目的とした取り組みです。  
一方でDXは「事業のあり方や提供価値そのものをどう変えるか」を問う取り組みです。  
目的・対象範囲・投資規模・組織への影響の深さが異なるため、  自社が「いま、どのステージにいるのか」を見極めることが重要です。

IT導入(業務効率化)とDX(事業変革)の対比を示す図

比較の視点

多くの企業で、IT導入とDXは同じ言葉として使われがちです。  
しかし、IT導入が「既存業務の効率化・自動化」を軸とするのに対して、  DXは「ビジネスモデルや収益構造の変革」「顧客体験の再設計」まで踏み込む取り組みです。

まずは両者の役割を整理し、  「今はIT導入を優先すべきか」「DXに踏み出す準備が整っているか」を判断することが、遠回りに見えて最短ルートになります。

IT導入
 

業務の効率化・自動化を目的とした取り組み

 
既存の業務プロセスを見直し、「人がやっていた作業」をシステムに置き換えていくアプローチです。
限られた人員・時間で、同じ業務をより正確・スピーディに回すことを狙います。
 

  • 既存業務プロセスの改善・標準化
  • 作業時間の短縮・コスト削減
  • 人的ミスの削減・品質の安定化
  • データの一元管理・見える化
  • 属人化している業務の分かりやすいマニュアル化・仕組み化

DX
(デジタルトランスフォーメーション)

事業変革・新たな価値創造を目的とした取り組み

 
デジタル技術を活用して、単に業務を効率化するだけではなく、「どのような価値を、誰に、どのように届けるか」というビジネスモデルそのものを見直していくアプローチです。
 

  • ビジネスモデル・収益構造の変革
  • 顧客体験の向上・個別最適なサービス提供
  • 新サービス・新商品の創出
  • データに基づく意思決定の定着
  • 組織文化・評価制度・働き方の変革

比較

比較

比較表

IT導入とDXの違いを、主な観点ごとに整理すると次のようになります。
 

比較項目 IT導入 DX
目的  既存業務の効率化・品質向上 事業構造・提供価値の変革、
新たな収益機会の創出
範囲 特定の業務・部門単位
(経理、営業、在庫管理など)
組織全体・バリューチェーン全体
(顧客接点〜バックオフィスまで) 
期間 比較的短期〜中期
(数カ月〜1年程度)
 中期〜長期
(複数年にわたる継続的な取り組み)
投資規模 小〜中規模。段階的な導入もしやすい 継続的・相応規模の投資が必要
(人材育成も含む)
組織への影響 業務手順や担当範囲の見直しなど、
限定的な変化が中心
 組織構造・評価制度・企業風土まで含めた
全社的・根本的な変化
リスク ツールが定着しない、使いこなせないといった
「導入失敗」のリスク
戦略の誤りや人材不足により、
投資に見合う成果が出ないリスク
期待効果   コスト削減、ミス削減、業務スピード向上 新たな収益源の創出、競争優位性の確立、
事業継続性の向上

 

事例

事例

 

IT導入の事例

会計システムの導入

手作業の帳簿管理から会計ソフトへ移行。
月次処理や決算業務の手作業を大幅に削減し、締め作業のスピードと正確性が向上。
 

顧客管理システム(CRM)導入

顧客情報を一元管理し、「担当者の頭の中」にあった情報を共有化。
フォロー漏れや二重対応を減らし、問い合わせ対応の質も安定。
 

在庫管理システム導入

リアルタイムに在庫を把握できるようにし、
過剰在庫や欠品を減らすことで、在庫コストと機会損失の両方を抑制。

 
 
 

DXの事例

オンライン販売チャネルの構築

実店舗のみの販売から、ECサイトやアプリを立ち上げることで、
地理的制約を超えた新規顧客層を開拓し、売上の柱を増やす。
 

サブスクリプションモデルへの転換

「一度売って終わり」の買い切り型から、月額課金型のサービスに転換。
継続的・予測可能な収益基盤をつくり、顧客との関係も長期化。
 

データドリブン経営の実現

顧客データ・利用履歴・生産データなどを分析し、
商品構成や価格設定、営業活動をデータにもとづき見直すことで、
顧客満足度と利益率の双方を高めていく。

 

どちらを選ぶべきか?判断基準

段階的アプローチのススメ

多くの中小企業にとって、いきなりDXに取り組むのは現実的ではありません。
まずはIT導入で「業務を安定して回せる土台」を整え、そのうえで「データ活用」「事業変革」へとステップを踏む方が、投資対効果も高くなりやすいです。

どちらを選ぶべきか?判断基準

段階的アプローチのススメ

多くの中小企業にとって、いきなりDXに取り組むのは現実的ではありません。
まずはIT導入で「業務を安定して回せる土台」を整え、そのうえで「データ活用」「事業変革」へとステップを踏む方が、投資対効果も高くなりやすいです。

IT導入フェーズ

基本的な業務システムの導入・効率化
  • 紙・Excel・口頭・属人化に頼っている業務を、基幹システムやクラウドサービスに置き換える
  • 手作業を減らし、標準化・マニュアル化によって、誰でも同じレベルで仕事ができる状態をつくる

 
まずは「現場が日々滞りなく回る」状態をつくることが、このフェーズのゴールです。

データ活用フェーズ

蓄積されたデータの可視化・分析・活用
  • IT導入でたまるようになったデータを「見える化」し、指標として活用する
  • 売上・利益だけでなく、リード数、受注率、在庫回転率など、経営判断に必要な数字を整理する

 
 
感覚や経験だけでなく、データに裏づけられた意思決定ができる土台を整えるフェーズです。

DXフェーズ

事業変革・新価値創造への挑戦
  • 既存の事業構造や提供価値を見直し、「どんな顧客に、どんな価値を、どのチャネルで届けるか」を再設計する
  • 新規事業や新サービス、サブスクリプション、プラットフォーム化などに取り組む

 
単なる「業務改善」から一歩進み、事業全体の変革に挑戦する段階です。

IT導入から始めるべき企業

  • まだ基本的な業務システムが十分に整っていない
  • 手作業が多く、担当者に負荷が集中し、効率化の余地が大きい
  • コスト削減・業務効率化が最優先の課題になっている
  • IT投資に使える予算や人材が限られている

 
このような場合は、まずはIT導入で「ムリ・ムダ・ムラ」を減らし、現場の余力をつくることが先決です。

DXに取り組むべき企業

  • 基本的なITインフラ・業務システムはある程度整備されている
  • 既存事業だけでは将来の成長に不安があり、新たな収益源や競争優位が必要
  • 顧客ニーズの変化や市場環境の変化に、より柔軟に対応したい
  • 人材育成も含め、中長期的な投資が可能な体制がある

 
このような企業は、「単なるシステム刷新」にとどまらず、DXとして事業のあり方そのものを見直す段階に入っていると言えます。

IT導入・DXの進め方でお悩みの方へ

自社が「いま、どの段階にあるのか」を客観的に整理するだけでも、  次に取るべき一手は大きく変わります。

自社に合った現実的なロードマップを描きたい場合は、  第三者視点での整理・検討もご活用ください。